京都ゑびす神社のお参りの記録(1回目)
京都府祇園四条駅

京都ゑびす神社は、鎌倉時代初期にあたる建仁2年（西暦1202年）、臨済宗の開祖として知られる高僧・栄西禅師によって建立された、長い歴史を誇る由緒ある社である。栄西禅師は宋（中国）から禅宗を日本に伝えた人物として広く知られ、禅の思想や修行法を広めた。その深い精神性と実践的な教えは、京都ゑびす神社の創建にも色濃く影響を与えたと伝えられており、禅の精神と商売繁盛の信仰が融合した、きわめて珍しい神社として今日まで信仰を集めている。

主祭神として祀られているのは、商売繁盛・五穀豊穣の神として全国的に名高い恵比寿神である。恵比寿神は右手に釣竿、左脇に鯛を抱えた姿で知られ、海の恵みや豊漁を象徴する存在でありながら、江戸時代以降は都市部の商人や職人たちの守護神として広く信仰されるようになった。特に京都ゑびす神社は、京の商人や茶屋、職人、さらには近代以降の企業経営者たちに至るまで多岐にわたる。

境内へ足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは無数の提灯である。それぞれの提灯には全国各地の企業や商店、団体の名が記され、参拝者の願いや感謝が込められている。こうした提灯の群れは京都ゑびす神社ならではの象徴的な景観であり、一歩足を踏み入れた瞬間から、参拝者にエネルギーと希望を与えてくれる。

社殿は落ち着いた木目の色調で仕上げられ、鎌倉時代以来の伝統的な造りを今に伝えている。細部の意匠には職人の技が息づき、年月を経た木材の質感からは歴史の重みが漂う。一方で、開放的で温かみのある空間が広がっており、訪れる人々は格式の高さと同時に、心安らぐぬくもりを感じることができる。参拝後には、境内に流れる空気が不思議と背筋を伸ばし、心を軽くしてくれるような感覚を味わえるだろう。

京都ゑびす神社は、単なる観光地や歴史的建造物ではなく、八百年以上にわたり人々の暮らしや商いと深く結びついてきた「生きた信仰の場」である。その場に身を置けば、鎌倉の昔から令和の今へと連綿と続く祈りの時間が、静かに、しかし力強く息づいていることを感じ取ることができる。

境内には、関西テレビの腕章を付けた取材班の姿があった。声をかけられたものの、多忙を理由に取材は辞退した。取材する側には番組の「取れ高」が必要で、それがなければ仕事が終わらないのだろう。そう考えると、せめて「日曜日の競馬、見ていますよ」くらいの愛想の一言をかける心の余裕が、自分にもあればよかったなと、境内を後にしてから思った。