弥勒菩薩はどんな仏像?広隆寺・中宮寺の半跏思惟像で有名な、56億7000万年後の未来の仏様を徹底解説
※記事中に使用したイラストの無断転載を禁止します。
「弥勒菩薩ってどんな仏様?」
「56億7000万年後の未来に現れるとは?」
「弥勒菩薩が有名なお寺を知りたい!」
全国8万ヶ寺以上のお寺を紹介する日本最大の神社お寺・御朱印の検索サイト「ホトカミ」編集部の高原です。
こんな仏像見たことありませんか?
この仏像は「弥勒菩薩(みろくぼさつ)」という仏様です。
特に、京都の広隆寺にある「弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしいぞう)」は、
彫刻作品の中で初めて国宝に指定されたほど有名です。
足を組んでいる姿が印象的ですが、なぜそうしているのか、不思議に思いませんか?
そこで、この記事では弥勒菩薩が足を組む理由や、どんな仏様なのか、さらに、56億7000万年後に世界を救う理由まで紹介します。
弥勒菩薩をさらに知ることで、お寺への参拝がより楽しくなるはず。
最後には、弥勒菩薩の有名なお寺も紹介するので、ぜひチェックしてください。
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弥勒菩薩は仏教版「考える人」
飛鳥・奈良時代は「足を組み、右手は頬」
弥勒菩薩は、足を組み、右手で頬を触れる姿が特徴的な仏様です。
飛鳥・奈良時代の弥勒菩薩は、
・足を組んでいる=半跏(はんか):片足を組んで座る
・右手は頬=思惟(しい):考えている様子
といった特徴を持つ半跏思惟像と呼ばれる姿をしており、深く考え込む様子を表しています。
【弥勒菩薩=仏教版考える人(半跏思惟像)】
と覚えましょう。
平安時代以降は「両手で小さな塔を持つ」
平安時代以降の弥勒菩薩は他の菩薩と同じく、
足を組まずに、坐像(座っている像)や立像(立っている像)の姿をしています。
見分け方は「手の形や持ち物に注目すること」です。
・両手で小さい塔(宝塔:ほうとう)を持っている
といった特徴があれば弥勒菩薩です。
弥勒菩薩は、56億年後に救いにやってくる!?
-
【要約】弥勒菩薩はどんな仏様?
- 現在は、天上界で修行中
- 再び、現世に降り立った際には、300億人を救う
- 「56億7000万年後」は、とても長い期間という意味
まとめると…
菩薩は悟りを開く前の存在
菩薩(ぼさつ)とは、悟りを求めつつ人々を救済する、出家前のお釈迦様の姿をしている仏像です。
「菩薩=悟りを開く前」と覚えましょう。
菩薩の特徴や見分け方を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
【初心者必見】仏像の見分け方ガイド!仏像の種類を見分ける方法を徹底解説
弥勒菩薩は、未来を担う救世主
弥勒菩薩は天上界にある「兜率天(とそつてん)」という場所に往生し、現在は修行をしつつ、私たちの生活を見守っています。
そして、56億7000万年後の未来に降り立ち、人々を救うと言われています。
56億年後に人々を救うことから「未来仏(みらいぶつ)」や「将来仏(しょうらいぶつ)」と呼ばれることもあります。
といっても、
「なぜ、56億7000万年後なの?」
「兜率天ってなに?」と疑問に思う方も多いはず。
ここからは、弥勒菩薩の由来や歴史について紹介していきます。
お釈迦さまの予言「56億7000万年後に世界の人々を救う
お釈迦様は「弥勒菩薩は天上界へ行き、56億7000万年後に再び地上に降りたち、人々を救うだろう」と予言しました。
その予言通り、現在、弥勒菩薩は天上界で修行を積み、天上界の人々に教えを説いています。
56億7000万年は「とても長い期間」という意味
では、なぜ弥勒菩薩は56億7000万年後に私たちの住む世界に現れるのでしょうか。
56億7000万年とは、簡単にいうと「とても長い期間」という意味です。
しかし、56億7000万年後という具体的な数字には、ちゃんとした理由があります。
実は、人間界(閻浮提:えんぶだい)と天上界(兜率天:とそつてん)では、
時間の流れ方が異なるのです。
いろいろ計算すると、5億7600万年になるのですが、
なんと、伝承されるうちに、56億7000万年に10倍も増えてしまいました。
5億7600万年という数字の根拠は、以下の通りです。
-
5億7600万(天上界での平均寿命)
=360(1年の日数)
×400年(天上界の1日は、人間界の400年)
×4000(天上界の平均寿命は、人間界の4000倍)
天上界の1日=人間界の400年
天上界の平均寿命=4000年
ものすごい違いですよね。
5億7600万年という数字が、さまざまな国や文化を経由した結果、
「56億7000万年」という数字に変わって伝えられるようになったと言われています。
そんな弥勒菩薩ですが、56億7000万年後に現れるとされながらも、
現世を生きる多くの人々が救いを求め、信仰しています。
ここからは、弥勒菩薩がどのようにして人々に信仰されてきたかを解説していきます。
お釈迦様は、弥勒菩薩に対して
「12年後に兜率天に弥勒菩薩として往生し、56億7000万年後に再び私たちが住む世界(閻浮提:えんぶだい)に降り立ち悟りを開く。」
と予言しました。
予言通り、弥勒菩薩は兜率天に往生し、現在は兜率天に住む天上人のために説法を行うなどの修行を行っています。
そして、閻浮提に再び降り立った際には、龍華樹(りゅうげじゅ)と呼ばれる木の下で悟りを開くことで弥勒如来(みろくにょらい)となり、3回の説法で300億人の人々を救うとされています。
この3回の説法のことを「龍華三会(りゅうげざんね)」と言います。
現在、弥勒菩薩が修行している「兜率天」とは、
私たちが輪廻転生する「六道」のうち天道に所属する世界の一つで、弥勒菩薩が説法をしている内院と、天に住む人の遊楽の場である外院があります。
【弥勒菩薩の信仰】弥勒菩薩は人間界に降りてくる
ここまで弥勒菩薩は56億7000万年後に人々を救う仏様であることを解説してきました。
しかし、現代の日本でも人間の平均寿命はだいたい85歳前後。
56億年間も待てるわけありませんよね。
そこで、平安時代末期の人々は、ある工夫をして弥勒菩薩に救いを求めました。
ここからは、そんな平安時代の人々がどのようにして、弥勒菩薩を信仰したのかを紹介していきます。
56億年後、私たちの住む世界に降りてくる:下生信仰
下生信仰は、平安時代末期に民間で流行した弥勒信仰の形です。
下生信仰では、56億7000万年後に弥勒菩薩が人間界に降りてくる(下生)を待つことで、救済を目指しました。
「56億7000万年後まで、どのようにして待つの?」と疑問に思う方も多いはず。
答えは、【写経】です。
当時の人々は、変化したり腐ったりしないものを後世に残すことで、弥勒菩薩に見つけてもらい、救済を得ようと考えました。
具体的には、写経を銅でできた筒の中に入れ、人目のつかない場所に埋めます。
この写経を、弥勒菩薩から下生したときに、何事も自由自在に行うことができる力(神通力:じんずうりき)で見つけてもらうことにより、救済を得ようとしたのです。
写経が埋められたつかのことを、「経塚(きょうづか)」と言います。
弥勒菩薩が広く民衆に受け入れられ、流行したきっかけは「末法思想」というものが関連しています。
「末法思想」とは現代でいう都市伝説のようなものです。
お釈迦様が亡くなってからおよそ1500年後から「末法」という時代に入り、
世相は荒れ、修行と悟りを得ることができなくなってしまうと言われていました。
ちなみに、下生信仰が広まる前の奈良時代には、貴族の間で上生信仰が流行していました
下生信仰は、弥勒菩薩が人間界に降りて救ってくれるのに対して、
上生信仰は、修行して、上の天上界で生まれ変わる信仰です。
奈良時代は、まだ末法の時代に入っておらず、修行が可能な時代でした。
そのため、厳しい修行を経て人間界から弥勒菩薩のいる天上界に往生し、直接説法を聞くことで救済を目指していたのです。
七福神の布袋は弥勒菩薩の化身
七福神の中でも夫婦円満や人徳の神様とされる布袋。
実は、布袋は、主に中国や台湾で弥勒菩薩の化身として崇められていることがあります。
というのも、かつて実在した布袋和尚は、中国にある嶽林寺の盤石の上で亡くなるとき、
「弥勒菩薩は、異なるたくさんの姿で、すでに現れているが、私たちはまだその姿に気づいていない。」
(原文:弥勒真弥勒、分身千百億、時時示時人、時人自不識(弥勒は真の弥勒であり、その姿は数えきれないほど無数に分かれて現れる。時折、人々の前に姿を現すが、人々はそれが弥勒だと気づかない。)
という遺言の詩を残しました。
これをきっかけに、布袋和尚が弥勒菩薩の化身であるとされるようになりました。
日本にも、京都の萬福寺に布袋の姿をした弥勒菩薩像があります。
ぜひ、参拝してみてください!
終わりに
ここまで弥勒菩薩の見分け方や、由来、信仰などについて解説してきました。
56億7000万年後の未来を救い、お釈迦さまの次に悟りを開く弥勒菩薩。
穏やかな表情で足を組んでいる美しい姿と、途方もない長い時間、修行を行い、すべての人々を救うとされる伝承から、多くの信仰を集めた弥勒菩薩は、全国のお寺でお参りすることができます。
ぜひ、この機会にお寺に参拝してみてはいかがでしょうか。
お寺に参拝した際には、ホトカミにも投稿してくださいね。
仏像イラストレーターが作った 仏像ハンドブック
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神社お寺の検索サイト「ホトカミ」運営代表
吉田 亮
月間120万人の神社お寺ファンが使う神社お寺の検索サイト「ホトカミ」を運営する株式会社DO THE SAMURAI代表取締役。
東京大学理科II類入学後、文学部言語文化学科日本語日本文学(国語学)専修課程卒業。
2013年より日本文化や歴史を後世に繋ぐ事業を開始、2016年法人化。
これまで2000人以上の参拝者との対話や、累計1000万アクセスを超えるお参りに関する記事の執筆編集、100年後に神社を残すために社会と神社の接点を創出する。
ホトカミ編集部 御朱印記事ライター
高原 健太郎
日本文化や神社お寺が好きです。
独特の雰囲気に魅了されてから、寺社めぐりが趣味になりました。
イラストレーター
田中ひろみ
絵文人・仏像研究家(株)TERABIT代表、奈良市観光大使女子の仏教サークル「丸の内はんにゃ会」代表。
カルチャー センター講師。元ナース。テレビ出演、講演も多数。ART ・俳句・盆踊らー
著書 『イラストレーターが作った仏像ハンドブック』(ウェッジ) など約70冊
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