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「神社を文化の発信地に」ワークショップで神社と人の繋がりを創出【神奈川・弥生神社インタビュー】

最終更新:2019年04月28日公開:2019年04月24日
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弥生神社は、高台に鎮座するため眺めがよく、
本殿のまわりには樹木がたくさんあって清々しさを感じる神社です。

弥生神社
この記事の書き手
神職/中小企業診断士

石井里幸


神職資格を持つ中小企業診断士。経営コンサルタントとして中小企業だけでなく神社に対しても支援をおこなう。また自らも神職としてときおり神社奉仕もしている。趣味はクラシックギターと生け花。

    目次

  1. 町の中の一風変わった神社
  2. 着想は震災支援の「傾聴ボランティア」で
  3. ワークショップを中心に、繋がりを創出する
  4. 神社は何よりもまず「心が穏やかになる場所」であること
  5. その神社ならではのキーワードを見つけて発信する
  6. 副業で得たスキルを活かす
  7. さいごに

町の中の一風変わった神社

神奈川県の中央部に位置する海老名市。
閑静な住宅街を抜け、急な石段をせっせとのぼった先にその神社はあります。
名前は弥生神社(やよいじんじゃ)。明治時代の創建です。

境内は豊かな樹々に囲まれ、また高台なので美しい大山山系の峰々を見渡すことができます。
しかし境内や社殿は特段広いというわけではありません。
よくある“町の神社“といった感じ。

しかしこの神社、一風変わっているんです。
弥生神社のホームページをみてみましょう。

メニューには「御由緒」「御祈祷・出張祭典」「授与品」といった、通常の神社のホームページでよく見るものと並んで、「ワークショップ」という項目があります。
そのページをみてみると、ずらりと並ぶ数々のワークショップ。
これから開催するワークショップの案内や、過去に開催したものなど、その種類の豊富さに驚かされます。

「大祓詞(おおはらえことば)書写会」「御朱印帳づくり」「熊手づくり」といった神社らしいものから、「連続講座 古代エジプト人の精神世界」というものまでありました。笑
この神社、とにかくワークショップの種類と開催頻度がハンパないのです。

しかもこれらワークショップの企画から広報活動まで、全ておひとりで担当されているというのだからさらに驚きます。
その方は弥生神社の権禰宜、池田奈津江さん。

今回、そんな池田さんにワークショップ開催にまつわる想いを聞いてまいりました。

弥生神社

着想は震災支援の「傾聴ボランティア」で

―神社でワークショップを開催するようになったきっかけは何ですか?

私が神職になったのは平成23年(2011年)で、東日本大震災が起きた年です。
神職となったからには、人のためになることをしたい。心はいつも被災地に向いていて、自分にもできることはないだろうかと常々考えていました。

あるとき、被災地の仮設住宅に住む人々の話を聴いてまわる「傾聴ボランティア」があることを知り、参加することにしました。

宗教者と有志の方々で構成されたチームで行動し、被災者の皆さんとお話をするのですが、あるときメンバーにいたお坊さんが、
「仮設住宅にある集会所を利用して、写経会をやろう」と提案したのです。

写経会のお手伝いをしていると、参加した方々がとても清々しい顔で帰って行かれるのを見て、これは効果的だなと思うようになりました。
そこで、お坊さんから
「お寺が写経なら、神社は大祓詞 (おおはらえのことば)※1ですね。神社でもやってみたら?」とご提案していただきました。

お坊さんの後押しもあり、自分の神社でも境内にある社務所を利用して大祓詞の書写会を開催するようになったのです。いまから4年前のことです。
お坊さんからの提案で始まったというのが面白いですよね。笑

弥生神社

当初、参加者はせいぜい3人程度でした。それでも毎月1回は必ず開催すると決めました。

広報の手段は、FacebookやTwitterでの呼びかけや、神社にご祈祷に来られ希望された方にDMを送るといった方法です。

そうしているうちに参加者も安定し、いまでは毎回コンスタントに10人以上は参加いただくようになりました。

東京方面からなど、地域外からわざわざお越しいただく方も徐々に増えていています。
当社のような観光地ではない地域の神社は、地域内の氏子さんとしか関わらないことがほとんどです。
そのため地域外の方にも来ていただくようになったことは、大変ありがたいことです。

※1祝詞(のりと)の一種で、およそ900の文字からなる。「穢れ」「罪」「過ち」を祓い清めるとされる。

ワークショップを中心に、繋がりを創出する

「大祓詞書写会」以外にも、毎月テーマを決めて別のワークショップを開催しています。

端午や七夕といった季節ごとにテーマを設けるのがベースですが、その合間に「お守り袋づくり」や「御朱印帳づくり」などのワークショップをやっているので、とにかく毎月何らかのワークショップを開催しています。

最近では、お守り袋や御朱印といった“モノを作る系”だけでなく、座学形式の“知識をつける系”のワークショップも充実してきました。

当然ながら、ワークショップのテーマを考えるときは、神社や神道と関連があるものを意識するようにしています。

―「古代エジプト人の精神世界」が気になります。これは神社と関連があるのですか?笑

あります!死生観を考えるという点において。笑
このワークショップは座学タイプですが、古代エジプト人が人間という存在、また人間の生死をどのように考えたのか。ミイラ作りにどんな思いを込めたのか…。
そんなことを皆さんで一緒に考える講座です。

古代エジプト人と私たちは宗教こそ違いますが、彼らの死生観を考えることが、神道への深い理解にもつながると考えられませんか?笑

でも、どのワークショップでもあえて教化※2を目的とせず、常連さんも飽きさせないようバランスは考えてテーマを選定しています。

※2神道の信仰を広める活動。いわゆる「布教」に近い意味だが、神社神道においては布教とは言わず、教化という言葉を用いる

弥生神社

神社は何よりもまず「心が穏やかになる場所」であること

―神社で行うイベントにもかかわらず、神道教化を目的としない理由は何ですか?

神職にとって教化活動は重要なミッションです。
しかし、それ以前に「神社って楽しい場所なんだ」と多くの方に思っていただくことの方が、私には大切なことのように思います。

神社に来てくれた人が楽しいと感じ、心が穏やかになること。
そんな神社でありさえすれば、自ずと神様との繋がりを感じ、信仰心が湧いてくるのではないでしょうか。

とはいっても、ワークショップの内容によっては参加者全員で「昇殿参拝※3」を行うものもあります。
大祓詞書写会やお守り袋づくりといった、神事と関係の深いワークショップは毎回、昇殿参拝を行うようにしています。
このように、可能な限り神様との繋がりを感じてもらうための仕組みづくりをするようにしています。
やはり神社ですから。

※3本殿に上がって神職によるお祓いを受けたのち、神様に近い場所でお参りできる特別な参拝

その神社ならではのキーワードを見つけて発信する

―多種多様なワークショップを開催しておられますが、毎回広報活動(人集め)は苦労されませんか?

勾玉(まがたま)を制作するワークショップを開催したときは、「勾玉 ワークショップ」でネット検索されて当社のホームぺージに辿り着いた方が大勢いらっしゃいました。
そんなキーワードで検索する方がいることに驚きました。笑

ホームページ経由でワークショップに参加してくれた方々は、ちょくちょく当社のホームページをチェックしてくれて、他のワークショップにも参加してくれることも多いのです。いわゆる常連さんですね。

また、当社には蚕影(こかげ)神社という、蚕(かいこ)の神様をおまつりしている摂社(せっしゃ)※4があります。
蚕の神様といっても、養蚕(ようさん)がほぼ行われなくなった現代においては「蚕=子だくさん」と解釈され、子授け・安産のご利益がある神様として知られるようになりました。

※4同じ境内内にある別の社。主祭神との縁が深い神様をおまつりしていることが多い

以前、この蚕影神社にちなんで「繭玉と絹を使って香り袋を作ろう」というワークショップを企画しました。
広報活動は、チラシを作って案内をホームページに掲載しただけなのですが・・・
いざワークショップ当日になってみると、全国から大勢の “蚕マニア”の方々が集結してくださったんです!笑

おそらく、その蚕マニアさんたちは普段から関連イベントをネットで探していて、「蚕 イベント」とか「蚕 ワークショップ」といったキーワードで検索したら、たまたま当社のページがヒットしたのでしょう。

ワークショップ自体は盛況に終わったのですが、どういうわけかその後も蚕マニアさんたちの研究総会や勉強会を当社で行うようになったのです。
流れで私もその研究会に入会してしまいました。笑

さらに、その蚕マニアさんがお友達を引き連れて当社のワークショップに参加していただくようになったり、蚕イベントがきっかけで思いがけないご縁を頂きました。

ここから一つ学んだことは、「その神社ならではのキーワード」を見つけること。
それをホームページで発信し続けることで、思わぬご縁に繋がる可能性があります。

副業で得たスキルを活かす

―ワークショップやイベントのチラシは池田さん自らデザインされていると聞きました

私は副業でillustratorなどのグラフィック・デザインソフトを使う仕事をしておりますので、そこで得た技術を活かしてチラシなどをデザインすることができました。
ホームページは妹に作ってもらいました。

だから神社やワークショップに関する広報活動は、ほとんどお金をかけることなく実現できています。
ホームページやチラシづくりを業者に依頼するとどうしても費用が要りますので、自分たちがもともと持っているスキルで何ができるかを考えることは重要ですね。

蚕マニアさんたちの事例でもそうでしたが、近頃は神社に来られる方はまずネット検索してきます。
ワークショップや御祈祷にいらした方に、どうやって当社を知ったかを聞くと大抵「ホームページをみました」という回答です。

インスタグラムやFacebookも使っていますが、やはり検索にヒットしやすいのはホームページですから、情報発信ツールとして今やなくてはならないものですね。

―最後に、池田さんはこれからの神社はどうあるべきだとお考えですか?

古いものを護りつつ、そのうえで現代的役割を担うこと。
そして社会の課題に向き合い、解決のためにできることを模索し続けること。

当社の場合、今後もワークショップ活動を通じて神社を文化の発信地にしたいと考えています。
「来てくれた方々が心が穏やかになる。」そんな場所づくりを目指しています。

いまでは徐々にではありますが、数年前と比べてご祈祷にいらっしゃる方も増えています。神社の本来の目的である「神様の存在を感じてもらう」機能を取り戻しつつあると感じます。

これからもワークショップ活動を通じて、人と神様との繋がりを創出していけたらな、と思っています。

さいごに

池田さんの転機は「傾聴ボランティア」でした。
そして神職としてのキャリアをスタートさせたその日から、自分にできることを考えてきた結果、「ワークショップの企画」に辿り着きました。
続けることの大切さを池田さんは説きます。

「私のやっていること一つ一つはとても小さなものです。でも、続けることでやがて大きな力になる。それには小さなことを少しずつ、積み重ねるしかありません。」

教化活動の前にまずワークショップという「集まってもらう」仕組みを作り、神社と人々の関係を徐々に近づけていく。

押しつけるのではなく、“感じてもらう”
そんなアプローチに池田さんの人柄が表れており、また押し付けないところに“神道らしさ”を感じます。

近年、全国に8万社以上あるほとんどの神社が参拝者の減少に悩んでいます。

少子高齢化や、氏子の信仰心の希薄化など様々な原因が指摘されるなか、神社が活力を取り戻す方法があるとしたら、池田さんの言うように小さなことを積み重ねていくことが大切なのかもしれません。

池田さんの取り組みが素晴らしいのは、ワークショップを通じてこれまで神社に興味を持たなかった人にも神社に来るきっかけを与えているところです。

「0を1にする」ことはとても凄いことです。
今回、池田さんの取り組みから、「神社の現代的役割」の一つの姿を見た気がします。

さて、次はどんなワークショップが企画されるのでしょうか。
みんなで文化や知識を楽しく学ぶことができる。こんな神社が近くにある地元の方がうらやましい・・・

池田さん、ありがとうございました!


海老名の鎮守さま 弥生神社


弥生神社

住所
〒243−0406
神奈川県海老名市国分北2-13-13
アクセス
電車:小田急・相鉄・JR相模各線 海老名駅東口 徒歩17分
バス:海老名東口駅より相武台下駅行(海10)で「弥生神社前」下車
海老名駅発バス時刻表 ※1時間1~2本程度

弥生神社|ホトカミ
弥生神社|HP

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