「神主さんの服装」袴の色で位がわかるって本当?
「神主さんの袴(はかま)の色って、どう違うの?紫の袴は、偉い神主さん?」
「お祭り、ご祈祷のときにいつもと違う服を着てる!」
神社にお参りに行ったとき、お祭りを見学したとき、
ご奉仕している神職(神主のこと)の変わった服装に疑問を持った方もいるのではないでしょうか?
そんな神職の服装について徹底解説していきます。
服装について知るだけで、お参りの楽しみが増えるかも?
吉田 亮
「100年後に神社お寺を残す」ために月間120万人の神社お寺ファンが使う神社お寺の検索サイト「ホトカミ」を運営する株式会社DO THE SAMURAI代表取締役。
東京大学理科II類入学後、文学部言語文化学科日本語日本文学(国語学)専修課程卒業。
2013年より日本文化や歴史を後世に繋ぐ事業を開始、2016年法人化。
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普段はこんな服!袴の色の意味とは?
神職が着ている服の名前は“装束(しょうぞく)”
神職が着ている服の名前は“装束(しょうぞく)”というものです。
元々、平安時代に公家や武家などの貴族が着ていた装束を江戸時代までずっと正装として着ていました。
しかし、明治時代に入ると、政府によって正装が洋装へと変わり、
装束(しょうぞく)は神社や宮中(皇居の中)でしか使われなくなってしまいました。
そのため、普段は装束(しょうぞく)を目にすることがなくなってしまいましたが、
神社では今でも使われています。
では、装束(しょうぞく)にはどんな違いや、意味があるのでしょうか?
神職が着ている装束(しょうぞく)は、お祭りの規模やその神職の身分によって異なります。
順に一つ一つ見ていきましょう。
装束は神職さんの普段着
ご祈祷(きとう)やお祭りが無いときは普段着として白衣(白い着物)に様々な色の袴、足袋を履いています。
外では雪駄(せった)と呼ばれる草履のようなものを履いています。
袴の色によって、神職の位がわかる!?
神職によって異なる袴の色は、あるルールによって決められています。
多くの神社の神職は、神社本庁という宗教法人によって、
特級、一級、二級上、二級、三級、四級という順に身分が分かれています。
これは、その神職の経験や人格、神社や神道に対する功績などによって決められます。
そして、その身分によって袴の色が変わるのです。
三級、四級……浅黄(浅葱)色
神職として神社にご奉仕をすると、まず三級や四級という身分になります。
袴の色は浅黄(あさぎ)色という薄い青緑のような色です。
歴史好きの方は新撰組のダンダラ羽織の色というとピンと来る方もいるでしょうか?
購入する装束店によって、青っぽい浅黄や緑っぽい浅黄など様々ですが、
神社でブルー系の袴を履いている方がいたら三級、四級の身分の神職です。
二級……紫色
三級、四級が若手の神職であるのに対して、二級は中堅の神職ですね。
袴の色は紫色です。
浅黄色に比べて落ち着いていて、ぐっと貫禄があるように見えますね。
二級上……紫色に薄い紫の文様
二級上になると袴は紫色のままなのですが、
八藤丸と呼ばれる文様が薄く入ります。
ここまでくると、神社のベテランの宮司さんなどしか履けません。
↑八藤丸
一級……紫に白の文様
二級上の中でもより神社界に貢献してきた神職は一級という身分に上がります。
この一級の神職は全体のうち約1%、200人程度しかいません。
袴は紫色に白い文様が入り、二級上に比べてよりはっきりと文様が見られます。
特級……白に白の文様
伊勢の神宮のトップである大宮司、神社本庁のトップである統理、大きな神社の宮司などごく一部の神職がこの特級という身分です。
袴は白色に白い文様が入り、一級に比べて文様が一回り大きくなります。
一見すると真っ白ですが、光のあたり具合によって文様が浮き出てくるのでわかります。
このように、履いている袴を見るだけで神職の身分がわかります。
この他にも、文様の入っていない白い袴や松葉色という濃いグリーンの袴などを履いている方も見られますが、
これは神職ではなく研修中の方や事務員さんなどに見られます。
お祭りによって変わる装束
お祭りの装束は特別!?
神職の普段着は以上の通りですが、
お祭りの際には、さらにその上から装束を着てご奉仕します。
このときに、何を着るかはお祭りの規模によって厳密に分かれています。
では、お祭りによって装束がどう変わるのか見ていきましょう!
神社で普段行われているお祭りは大祭(たいさい)、中祭(ちゅうさい)、小祭(しょうさい)などにわかれています。
大祭、中祭、小祭について詳しくはコチラ↓
「例大祭」とは? 神社では365日エブリディお祭りしている!?
これらのお祭りの規模によって、
衣冠単(いかんひとえ)、斎服(さいふく)、狩衣(かりぎぬ)、浄衣(じょうえ)などに分かれます。
今回は特に男性の神職の装束について解説します。
大祭(たいさい)では“衣冠単(いかんひとえ)”
大祭では正装として衣冠単(いかんひとえ)という装束を身に着けます。
衣冠単(いかんひとえ)は、平安時代に束帯(そくたい)という装束が簡略化して生まれた装束です。
袍(ほう)と呼ばれる一番上に着る装束の色がそれぞれ身分によって決められています。
- 特級・一級:黒※
- 二級上・二級:赤※
- 三級・四級:縹色(読み:はなだ色、濃いブルー)
冠(かんむり)を被り、単(ひとえ)という中着(なかぎ)を着て、袴は身分にそった色のものを履きます。
中祭(ちゅうさい)では“斎服(さいふく)”
大祭(たいさい)では身分によって決められた色の装束を着けていましたが、
中祭では身分問わず、礼装として斎服という装束を着用します。
衣冠がもともと平安時代以降、身分を表す服装だったのに対し、
斎服は神事のための服で、全て白い絹で作られています。
一部例外として、宮中や伊勢の神宮、靖國神社などの神社では、
大祭(たいさい)においてもこの斎服(さいふく)が着用されます。
衣冠単(いかんひとえ)や斎服(さいふく)の際には、うしろに長く纓(えい)が伸びた冠を被ります。
下の画像の赤丸の部分が纓(えい)です。
平安時代には、冠や烏帽子(えぼし)を被らない事は、
下着を履いていない、というくらいには恥ずかしいことでした。
斎服では単や袴も衣冠単と違い、身分を問わず白色のものを着けます。
小祭(しょうさい)、その他の儀式等では“狩衣(かりぎぬ)・浄衣(じょうえ)”
大祭、中祭以外では常装として狩衣(かりぎぬ)や浄衣(じょうえ)といった装束を身に着けます。
平安時代の下級貴族の普段着として着用された装束が狩衣(かりぎぬ)で、
色や文様は基本的に自由です。
そして、その狩衣(かりぎぬ)が神事専用に白い絹で作られたのが浄衣(じょうえ)です。
狩衣と浄衣のどちらを使うかは明確には決まっておらず、その神社により様々な使い分けがされています。
頭には絹や紙を漆(うるし)で固めた烏帽子(えぼし)を被ります。
冠と違い、烏帽子(えぼし)では宮中に入ることのできない、
つまり、天皇の前には出ることの出来ないもので、日常の被り物として用いられました。
狩衣の時は身分に沿った袴を、浄衣の時は白い袴を履きます。
これらの衣冠単、斎服、狩衣、浄衣などの装束は共通して、
浅沓(あさぐつ)という木に漆を塗ったクツを履き、手には薄い木の板の笏(しゃく)を持ちます。
<衣冠単、斎服、狩衣、浄衣の見分け方>
赤丸のような冠を被っている場合、衣冠単(いかんひとえ)か斎服(さいふく)。
そのうち、全身白い装束の場合が斎服、色付きが衣冠単。
烏帽子(長い部分がない)を被っているのが狩衣(かりぎぬ)か浄衣(じょうえ)。
そのうち、全身白い装束の場合が浄衣、色付きが狩衣。
という風に分かれます。
まとめ
いかがでしたか?
神職さんの身分やお祭りの規模によって色々な装束を着けていることがわかりましたね!
今度神社にお参りしたら、チラッと神職さんの服装にも注目してみて下さい。
普段お参りしている神社でも、新しい発見が見えてくるかも……?
ちなみに、私は子供の頃から実家のお祭りで装束を着る機会があり、
次第に装束に興味を持つようになりました!
調べてみると、意外と色々な場所で装束を着ることが出来るようです。
皆さんも見るだけでなく実際に着てみてはいかがですか?
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