谷保天満宮のお参りの記録(1回目)
東京都谷保駅

東京都国立市谷保に鎮座する谷保天満宮。JR南武線谷保駅から徒歩5分という至便な立地にありながら、一歩その境内へ足を踏み入れた瞬間、日常の喧騒とは一線を画す静謐な空気に包まれます。主祭神は、学問の神として広く信仰を集める菅原道真公。延喜3年（903年）、道真公の第三子・菅原道武公がこの地に御神霊をお祀りしたことに始まる、関東最古の天満宮と伝えられています。その歴史は千年以上を数え、まさにこの地の信仰の中心として、人々の祈りを受け止め続けてきました。

甲州街道に面した大鳥居をくぐると、そこから先はまるで別世界。街道沿いの明るい景色が一転して、木々が立ち並ぶ神域へと続く参道が現れます。緩やかに谷を下るように続く道筋は、木漏れ日と土の香りに満ち、まるで森の中を進むような感覚を覚えます。鳥のさえずりと風の音が混じり合い、訪れる者の心を自然と鎮めてくれるのです。まさに、拝殿に辿り着く前のこの道こそ、俗世から神域へと心を整えるための“導入”なのかもしれません。

やがて視界が開け、立派な入母屋造の社殿が現れます。その荘厳な姿は、関東三大天満宮の一社と称されるにふさわしいもの。木の香りが漂う拝殿前で手を合わせると、どこか穏やかで、しかし凛とした力を感じます。受験生や学問成就を願う参拝者が後を絶たないのも頷けます。

お守りを授かろうと思い、カバンから財布を取り出そうとしたところで、ふと気づきました——今日は財布を忘れてきてしまったのです。よりによって、こういう日に限って。キャッシュレスが当たり前の今、スマホ一つあれば何でもできる時代ですが、神社ではやはり現金の存在が恋しくなります。「財布を忘れて陽気なサザエさん」などという歌詞も、もはや懐かしい響きになりつつあるのでしょうか。

それでも、時代がどれほど変わろうとも、この谷保天満宮の風景だけは変わらないはずです。人々が手を合わせ、季節の移ろいとともに神々を敬うこの場所は、まさに“変わらぬもの”の象徴のように思えます。未来の参拝者たちもまた、この谷の社で心を静め、道真公に感謝と願いを捧げることでしょう。


追加
財布はカバンの別ポケットに入れていたことが後に判明。すぐにでも参拝の機会がありそうなので、御守はその時にと考えています。