志茂熊野神社のお参りの記録(1回目)
東京都志茂駅

志茂熊野神社は、正和元年（1312）に西蓮寺住職・淳慶阿闍梨が紀州熊野三社権現を勧請して創建された古社。現在の北区志茂地域の鎮守として信仰を集め、社殿は昭和43年（1968）に改築された。旧本殿は文政5年（1822）に建てられ、現在は境内右手に末社として残っている。

● 地域に息づく末社信仰と講の文化
本殿右手には阿夫利神社・浅間神社・大六天神社・十二社神社の四社が祀られている。いずれも「講」による信仰の対象で、特に阿夫利神社には現在も神社総代による春の参拝が続けられている。

● 北区無形民俗文化財「白酒祭」
毎年2月7日に行われる「白酒祭」は、600年の伝統を持つ特殊神事。大きな紙に「鬼」と書かれた的を弓矢で射抜き、邪気払いと五穀豊穣を祈る。射手は一本目を外し、二本目以降で命中を狙う「御歩射」が古式通りに行われる。行事の後は、参拝者に甘酒と切餅が振る舞われる。

● 幻の唄「白酒の唄」の復活
神楽殿では地域に伝わる「白酒の唄」「白酒節」が披露される。かつて一度は忘れ去られたが、地域の高齢者の記憶によって復活し、今も受け継がれている。

● 神木・梛の木と縁結び
参道には「梛（なぎ）の木」が立ち、縁結びの神木として親しまれている。源頼朝と北条政子の縁を象徴する木で、葉は裂けにくく、財布に入れると「縁（円）」が切れないといわれる。

● 年間行事と地域とのつながり
初詣、祈年祭、例大祭、新嘗祭など、年間を通じて多くの神事が行われ、地域とのつながりを保っている。6月には水神宮祭、大祓、12月にはお焚き上げなどもあり、神社は四季折々の行事の中心として機能している。