善仁寺のお参りの記録(1回目)
東京都茗荷谷駅

善仁寺は、東京都文京区に位置する真宗大谷派の寺院で、山号は「石川山」、院号は「福寿院」です。その起源は、安和2年（969年）に真言宗寺院「福住院」として創建されたと伝えられています。鎌倉時代、親鸞聖人が小石川を巡錫中に立ち寄り、その際に住職であった釋賢徴が浄土真宗へ改宗したことで、寺号が「善仁寺」と改められました。

● 親鸞聖人との出会いと極楽水の伝説
親鸞聖人が善仁寺に滞在中、飲み水を求めましたが、当時の井戸からの水汲みに苦労していました。その際、親鸞聖人が持っていた杖で地面を突いたところ、水が湧き出たと伝えられています。この出来事は「極楽水の井戸」として語り継がれており、現在も境内にその遺跡が残されています。この奇跡を目の当たりにした住職は親鸞聖人に帰依し、浄土真宗へ転宗する契機となりました。

● 善仁寺の構成と寺宝
善仁寺の本尊は阿弥陀如来像です。また、境内には人間国宝・香取正彦作の梵鐘があり、その美しい音色が歴史を彩っています。寺院の周囲には、かつて「善仁寺門前町」と呼ばれる賑わいを見せた地域が存在し、江戸時代には多くの人々が行き交う場所となっていました。

● 墓所とゆかりの人物
善仁寺には、さまざまな歴史的人物が眠っています。茶人の野田酔翁、儒学者の野田剛斎、日本画家の大倉雨村、そして書院番として仕えた犬塚忠倫と犬塚忠暁などがその代表例です。これらの人物たちは、善仁寺と地域の歴史を支えてきた存在として知られています。

● 文献に見る善仁寺の記録
「小石川區史」や「東京名所図会」などの文献には、善仁寺の詳細な記録が残されています。これらの文献によれば、かつて善仁寺は境内の広さが約8,000坪以上あったとされ、一帯が寺領であったことが記されています。また、境内には法厳寺や観応寺といった寺中が存在し、江戸時代に栄華を極めたことがうかがえます。