三崎稲荷神社のお参りの記録(1回目)
東京都水道橋駅

三崎稲荷神社は、東京都千代田区三崎町に鎮座しています。古くからこの地に根を張り、町の移り変わりを静かに見守ってきたであろう神社ですが、現代では高層ビルに囲まれ、まるでその喧騒のなかにぽっかりと生まれた静謐な空間のようにも感じられます。限られた敷地ながら、その一角を丁寧に活かすように社殿や鳥居、手水舎などが整えられ、さらにそれらを取り巻くように植栽が丁寧に手入れされていて、まるで緑そのものが神域を守っているかのような趣があります。

とりわけ印象に残ったのは、社殿を正面に見て右手に立つ大きな銀杏の木でした。この一本の木が、春には芽吹きの喜びを、夏には青葉の勢いを、秋には黄金の光を、そして冬には潔い静寂を、それぞれの季節ごとに見せてくれるのだろうと想像させてくれます。訪れたときはちょうど冬枯れの景色で、葉を落とした枝が冷たい空に向かって凛と伸びている姿に、冬を耐え忍び春を待つ生命の力を感じました。

そんな荘厳さと静けさに包まれながらも、ふと心の隅に浮かんだのは、「この一等地にある神社の周辺、地価はどれほどするのだろうか」といった、極めて俗っぽい思いでした。神聖な空間に身を置きながらも、現代社会の一員としての意識が頭をもたげてしまったことに、我ながら苦笑し、少しばかり反省の気持ちを抱いたひとときでもありました。