ごんしょうじ

高観音近松寺

近松寺は平安時代の延喜4年（904年）、天台密教の大成者である五大院安然和尚によって創建されました。当初は現在の長等公園東側、園城寺南院に位置しており、本堂、法華堂、三重塔などの立派な伽藍を有していました。この寺院は後に園城寺南院の別所となり、地域の宗教的中心として重要な役割を果たしてきました。
応仁3年（1469年）、浄土真宗本願寺派の蓮如が延暦寺による弾圧を受けた際、園城寺が蓮如を保護しました。園城寺南院の万徳院の斡旋により、近松寺の敷地の一部を蓮如に譲り受け、その地に蓮如は後に近松別院を建設しました。このような歴史的背景から、近松寺は浄土真宗との関わりを深めました。
安土桃山時代の文禄4年（1595年）、豊臣秀吉の怒りに触れた園城寺が廃寺となった際、近松寺もその影響を受けて衰退しました。しかし、秀吉の死後、園城寺が再興されると、近松寺も慶長9年（1604年）に本堂が再建され、寺院としての機能が回復しました。
江戸時代の元禄2年（1689年）頃、音曲諸芸道の氏神を祀る関蝉丸神社が園城寺の支配下に入りました。その後、近松寺はこの神社を管轄するようになり、関蝉丸神社の免許を持つ芸能者たちが近松寺を拠点に全国を行脚し、説教節や諸勧進などの活動を行うようになりました。このことから、近松寺は芸能者たちとの深い関わりを持つ寺院として知られるようになりました。
江戸時代の劇作家である近松門左衛門（本名：杉森信盛）は、寛文12年（1672年）にこの近松寺に滞在し、約3年間を過ごしました。この滞在中に近松門左衛門は多くのインスピレーションを得て、その後の劇作に大きな影響を与えたとされています。このことから、近松寺は「近松門左衛門ゆかりの寺」としても知られています。
現在の本堂は享保元年（1716年）に再建されたもので、千手観音が本尊として祀られています。また、本堂の北側には渡廊下で繋がった阿弥陀堂があり、嘉永3年（1850年）に建立されました。この阿弥陀堂は「善光寺如来堂」とも呼ばれ、本尊は善光寺如来です。
近松寺は「高観音」という別名を持っています。この名称は、園城寺の観音菩薩の中で最も高い場所に位置していることから名付けられました。園城寺五別所の中で、創建当初の場所を移動せずに現存しているのは、近松寺だけです。このことからも、近松寺が歴史的な価値を持つ重要な寺院であることがわかります。

千手観音菩薩

長等山

延喜4年（904年）

五大院安然和尚

近江西国三十三観音霊場第4番
江州三十三観音第3番
びわ湖百八霊場第5番

本堂、渡廊下、阿弥陀堂、銅造千手観音菩薩立像　（市指定有形文化財）

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